
夏の入口に、体をやさしく整えるお茶習慣
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ #020

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
こんにちは。
6月に入り、日差しが一段と強くなってきました。まだ夏本番ではないものの、日々の中に暑さの気配を感じるこの季節は、まさに『整えどき』のとき。
今回のテーマは「薬膳的な視点からの、初夏のお茶選び」。毎日のセルフケアをもっと前向きに楽しむヒントとして、体にやさしいお茶の提案をお届けします。

薬膳では、『お茶』も食養生の一部
薬膳というと、少し難しそうに感じるかもしれませんが、実はとてもシンプル。季節や体調に合わせて「今、必要な食材を選ぶこと」。つまり、お茶も立派な『食養生』のひとつなのです。
夏の入り口には、体の熱を適度に逃がし、内臓を冷やしすぎないバランスが大切。そんな視点でおすすめしたいのが、次の5種のお茶です。
1.ゴーヤ茶
夏の代表野菜であるゴーヤは、「寒性」の食材。体の熱を冷まし、余分な湿気を追い出してくれるため、薬膳では夏の養生に重宝されます。ほんのり苦みがありますが、前号で登場したカレーなどにも好相性なのでお試し下さい。

2.とうもろこし茶(ひげ茶)
とうもろこしのひげを乾燥させたひげ茶は、体内の『湿』を取り除く力に優れています。むくみや重だるさを感じる梅雨どきにもぴったり。

3.緑茶
日本人に馴染み深い緑茶は、「清熱」の効能で体の余分な熱を鎮めてくれます。ビタミンCも豊富で、紫外線が気になる季節の美容ケアにも心強い存在。

4.ローズマリーティー
ウッディな香りが魅力のローズマリーは、気の巡りや血行を整え、集中力アップにも効果的。温性のハーブなので、冷えやすい体にもやさしいお茶です。

5.ミントティー(モロッコ風)
増えやすい庭のミントをたっぷり使って、爽快な甘いミントティーを。モロッコ風の飲み方は、体の熱を和らげながら気分もリフレッシュさせてくれます。

「冷やさない工夫」もセルフケアのひとつ
暑い日には冷たい飲み物が欲しくなりますよね。でも薬膳や中医学の視点では、「冷えすぎた飲み物は内臓の働きを鈍らせる」と考えられています。
体の中を冷やすのは、食材の持つ“性質”にまかせ、温度は常温~ぬるめで取り入れてみてください。冷たい氷水をゴクゴク飲む代わりに、体の熱をじんわり落ち着けてくれるお茶を、ゆっくり楽しむこと。これも立派な、ポジティブなセルフケアです。
毎日のお茶時間に、やさしい習慣を
朝起きたとき、食後のひととき、夜のくつろぎ時間。一日に何度も訪れる「お茶の時間」に、ちょっとだけ体をいたわる視点を加えてみてください。
自分を整えるための一杯が、毎日を少しずつ軽やかにしてくれるはずです。