寒露のころに整える『巡り』と『発酵』~新米と秋のきのこで体を温める~

寒露のころに整える『巡り』と『発酵』~新米と秋のきのこで体を温める~

料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

谷尻直子 Tanijiri Naoko
東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。

寒露の食養生

二十四節気でいう「寒露(かんろ)」の頃、朝晩はぐっと冷え込み、日の出が遅く、日の入りが早くなります。ついこの前までの暑さが急に影をひそめ、空気は澄んで秋が深まり始める時期です。

気温差が大きくなることで、体は思った以上に緊張しやすく、肩や背中がこわばったり、手足が冷たくなったりする方も増えてきます。夏の疲れが残ったまま冷えにさらされると、消化機能や代謝が落ち、体の巡りが滞りやすくなるため、今こそ「温めながらめぐらせる」食養生が大切です。

市場やスーパーには、この季節ならではの食材が顔をそろえます。梨やぶどう、柿、いちじくといった果物は、乾燥しがちな喉や肺をうるおし、腸の調子を整えてくれます。野菜では、生姜やネギを積極的に取り入れて冷えやすいお腹を守りましょう。さらに、豊富なうま味を持つきのこ類は消化を助けて巡りをよくしてくれます。栗やくるみはエネルギーを補い、疲労回復にも役立ちます。きのこご飯にくるみを加えるのもおすすめです。

秋のきのこは、うま味成分(グルタミン酸・グアニル酸)が豊富で、消化をサポートしながら腸を整える食物繊維もたっぷり。さらに塩麹に漬けると風味が増し、調理もぐっと楽になります

つくり方は、きのこをほぐして軽く炒め、少量の味醂を加えてアルコールを飛ばし、火を止めて塩麹を加えて味をみたら完成!これだけでうま味がぐっと深まり、パスタに加えたり、茹でたほうれん草にのせたり、柑橘を絞って和えたりと、幅広く使えます。

なめこの煮物

また、夜におすすめなのが「なめこの煮物」。
だしをベースに、なめこをさっと煮て生姜を添えるだけで、体を内側からほぐし、温めてくれます。天然のとろみが胃をやさしく包み、疲れた消化器をいたわる一品です。

材料(作りやすい分量)
・なめこ…1袋
・だし汁…(なめこ1袋に対して)100cc
・本みりん…10cc
・醤油…10cc
・きび砂糖…小さじ1/2

味見をして、お子様がいるご家庭では砂糖やみりんを少し増やしてもOKです。熱湯や電子レンジで温めた絹ごし豆腐の上からかけると、卵も片栗粉も登場しないのにまるで「茶碗蒸しのきのこあんかけ」!やさしい味わいに生姜の吸い口がよく合い、ぽかぽかしてきます。

新米の季節、発酵の力で体を温める

そして、秋の楽しみといえばやはり新米。夏を越えた体は、冷えとともにエネルギーを欲しています。新米のふくよかな甘みは、塩麹や発酵調味料との相性が抜群。

炊きたてのごはんにきのこの塩麹漬けを乗せたり、なめこの煮物と温豆腐をかけたりすれば、きのこ丼に。三つ葉を散らしても美味しいです。発酵の力がごはんの甘みを引き立て、体をじんわり温めてくれます。

玄米や七分づき米など、少しぬかが残ったお米には白米にはない栄養素が含まれています。可能な範囲で取り入れてみましょう。

米の中でも薬膳でもち米は「温製」に分類されるため、うるち米よりも体を温める力が強いとされています。どちらもある方はもち米を取り入れるとなお良いでしょう。

巡らせて整える、秋から始める冬支度

秋は、軽いストレッチやウォーキングで巡りを促すことも大切です。食事と動きを組み合わせることで、冷えやこわばりをやわらげ、冬の準備になります。空気が澄み、夜が長くなるこの時期。きのこや栗、柿など秋の恵みと発酵の力を取り入れ、体の内側からじんわりと温まりながら、健やかな冬の準備を始めてみませんか。

この季節はストールが大活躍します。
喉を温めること、「暑くも寒くもなく心地よく歩ける。」のは、今だけです。空の雲の形の変化を観察しながら、体にもいいなんて。一駅分歩いた後は、おいしい秋の味を楽しみに、そんな「生活のスタイリング」をして内側からメンテナンスしましょうね。

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