捨てられがちな皮の美味しい活用法 陳皮の魅力
epotiveをご覧の皆様こんにちは!このコラムを谷尻直子と共に執筆しております、HITOTEMA奥山千晶です。私は長年マクロビオティックのインストラクターをしており、HITOTEMAでは調理や撮影を担当しております。どうぞよろしくお願い致します。
さて、皆さんは、
「冬」と聞いてどんな光景を思い浮かべるでしょうか。
ふーっと吐き出すと白くなる息
降りたての雪に踏み出すはじめの一歩
結露で曇った窓にする落書き
色々な冬の光景がありますが、わたしの「冬の光景」と言えばおばあちゃんの家のこたつでぬくぬくしながらみかんを食べる光景です。
冬になるとみかんが旬を迎えますね。
小さかった頃の私はみかんの白い筋まできれいに摂りたい派で(笑)
祖母にいつも「みかんの白いところには栄養がたくさんだから食べなさい」
と言われたものでした。
祖母がの話す通り、みかんは果肉だけでなく、その皮にも素晴らしい効能が隠されてことを知ったのは、私が体型や肌に悩み、食におけるウェルネスを探求し始めた頃でした。
皆さんご存知の通り果肉にはビタミンCが豊富に含まれ、風邪予防や美肌効果が期待できます。
話は少しそれますが、美肌に効く代表的なビタミンは三種類あり、その頭文字を取って「ビタミンACE(エース)」と呼ばれます。Aは修復、Eは現状サポート、Cは向上の効果があり一緒に摂ることで相乗効果をもたらします。
栄養素で言うと、皮の方には血流改善や抗アレルギー(ヘスペリジン/ビタミンP)、代謝促進やリラックス作用(リモネン)、内臓脂肪低減(βクリプトキサンチン)、美肌効果(ビタミンA)といったたくさんの効能がある栄養素を含んでいます。
冬は寒さで血液の流れや内臓の動きが滞りがちです。この時期旬を迎えるみかんが冬に起こりがちな不調を改善してくれる効能を持ち合わせているって不思議ですよね。
身土不二(その時期にその場所でできたものを食べる)
一物全体(まるごと全部いただく)
マクロビオティックにおいて重要とされている考え方です。
難しい栄養素の名前は知らなくても、季節の旬を知って選んで食べることで自然とその時に自分の体に必要な栄養を摂取することができます。
このようにまるごとすべてに栄養が豊富なみかんですが、皮をそのまま食べることはさすがに難しいですね。(汗)
そんな時おすすめなのが今回オススメする「みかんの皮を干す」という方法です。
「陳皮(ちんぴ)」って聞いたことがありますか?
古くから薬膳に使われてきた生薬の一つですが、
実はこの「陳皮」、みかんの皮を干して乾燥させることで作られているんです。
陳皮の薬膳における効能としてはリラックス効果、胃腸の調子を整える、咳や痰、のどの痛みの改善、冷えを和らげる、などが挙げられます。
さきほどご紹介した栄養学的効能と似たところもありますね。
生薬と聞くと何やら難しそうに聞こえますが、作り方は簡単。
みかんの皮を洗って乾燥させるだけ!
ただし天日だけで乾燥させるとなると1週間程度かかり、カビなどの心配がありますね。
そこでまずは100℃のオーブンで70分焼いてから、その後に天日干しをしましょう。
これなら手軽に取り入れやすく感じませんか?
そして陳皮の「陳」という文字は古いという意味であり、古いほど効能が高いそうです。乾燥させてストックしておけば一年中健康に役立つ薬膳素材というわけですね。
完成した陳皮の召し上がり方ですが、一番手軽な方法は熱湯を注いでお茶として楽しむこと。
生の状態だと苦みが強いイメージですが、乾燥させてお茶にすると苦みは少なく、ほんのり香るみかんの風味が心を癒し、体を温めてくれます。
乾燥ならではの食べ方としてもうひとつおすすめなのが、パウダー状にすることです。
みかんの皮の外皮は薄くて柔らかいので、他の柑橘(レモンや柚子、かぼすなど)に比べるとのは少し難しいです。十分に乾燥させたものであれば、ブレンダーにかけるたり包丁で刻んで細かくり、細かくしてお料理やデザートのアクセントに取り入れるのもお勧めです。実際に七味唐辛子やカレー粉の中には陳皮が入っているものがありますね。
マクロビオティックでは、毒消しという食べ合わせの法則があります。お肉やお魚、牛乳などの動物性の食品を摂りすぎると体が酸化して老廃物(毒)が滞ってしまいます。その為、消化吸収を促す食品と合わせて食べましょう、というものです。
みかんはお魚と食べ合わせるとよいとされています。焼き魚の横には必ず大根おろしと柑橘が添えられていますよね。これは魚の脂の消化を助ける為です。その際選ぶとしたら酸っぱいみかんの方がより効果があります。酸味(アルカリ性)はお魚を食べることで酸性に傾いた体を真ん中に戻してくれるからです。
私が以前に聞いておもしろいなと思ったのは、みかんの木は魚が獲れる海岸沿いに多く植えられているという話です。昔の人々は獲れた魚を育てたみかんと共に食べ、健康を保っていたのでしょうね。
先ほどご紹介した陳皮のパウダーも合わせて大根おろしにかけてお魚と共に召し上がるのはいかがでしょう。
みかんの栄養について教えてくれた私の祖母は料理上手で、私は祖母の作ってくれるお料理が大好きでした。
今、あたたかな冬の思い出と共に振り返ると、ひとつひとつが私や家族のことを想う愛で溢れていたなぁと実感します。
きっと祖母はビタミンACEやヘスペリジンなんて知らなかったと思いますが、その時期に家族に食べさせたい旬の食材をまるごと全部味わう術をたくさん知っていたんですね。
少しだけ現代に生きる私は、みかんの皮を捨てずに活用して元気に冬を過ごしたいと思います。
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