派手じゃなくていい。確実に豊かになる冬の準備〜食養生は台所の整えから〜
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ
立冬と呼ばれる冬のはじまりの頃、いよいよ年末ムードが漂います。夏にすべき養生をしておくと秋に疲れが出にくく、秋に、冬のための養生をすると、冬、「自分を使いやすく」なる。自分の「したいこと」「ありたい気分」で居られると幸せじゃないですか?
ところが「自分が使いにくい」つまり、頭で思い描くほどには生産性が上がらない。年齢を重ねるほどに、そんな日が多くなります。意外ですか?バイタリティの塊、なんて言われる私も、いい年齢です。
1日の中であれとこれとそれをしたいのに、古いパソコンのようにボ〜〜〜ンと音だけを鳴らし、立ち上がらない自分。「頭が働かない」「体が立ち上がらない」あるいは「気分がのらない」日もあります。
快適と不快の間にある「不快でない」状態
四季のある日本では「季節の変わり目」が頻繁に訪れます。観察してほしいのは、その時に気候が与える不快さがないかということ。例えば、寒い外から暖かい部屋へ戻った時。思わず深呼吸している自分に気づきますよね?湯船に入った時も同じ。
そのような、意識せず深い呼吸ができている環境こそが「快適」。「快適」の反対に「不快」があるとしたら、その間に「不快でない」という状態があります。毎秒湯船のような快適さを求めずとも、せめて「不快でない」状態ではありたいもの。その感覚を整えるために、日々の「食から始める養生」が役に立つのです。
自炊が難しいのはなぜ?
一人暮らしで仕事を持つ方なら、自炊そのものが困難だと思うこともありますよね。忙しい、それが一番にくるでしょう。時間ができてもデリバリーアプリを開いてしまうこと方も多いのではないでしょうか。では、なぜか?
「環境が整っていない」というのが、理由の一つにあると思います。

まずは『キッチンの断捨離』から
キッチンの動線、道具の量、ワゴン、食洗機、洗った食器を置く場所、気分が上がる食器やカトラリーの有無…。年末に向けて、一度すべて見直してみませんか?

私も一人暮らし時代、壁付のコンパクトなキッチンで置き場がなく嫌になったり、来客後の片付け量に「どっ」と疲れが出たり。でも、ワゴン兼テーブルを導入したり、置き型食洗機購入を「決断」してから、10だった疲労は4〜5へ。半分以下!大したものです。
自分観察と空間の見直しがどれだけ大切か、今でもしみじみ思います。もし整えていなかったら、今の私は「料理が毎日に有る人」にはなれていなかったかもしれません。
内側の断捨離 × キッチンの断捨離
11月〜12月は断捨離の季節。根菜など、腸のお掃除をしてくれる食材をせっせと摂りながら、家の『キッチンの断捨離と整え』を進めてみてください。2026年からの生活が、派手ではないながらも確実に豊かになる。そんなクワイエットラグジュアリーを目指して。
今回は具体的レシピよりも、料理をする/しない、その選択を支える「始められる・続けられる環境づくり」のお話でした。次回は、体の『元気』をつくる黄色の食材たちを、美味しく取り入れる知恵をまとめたいと思います。