
冬の眠りから目覚める味 – ほろ苦さを楽しむ「ふきのとう味噌」
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
冬から目を覚ます苦味との美味しい付き合い方
春がそろそろとやってきましたね。
山に積もっていた雪が解け、地面の中からたくさんの新しい命が芽吹き始めます。
こごみやわらび、ふきのとうなど山菜の新芽をいただく文化が日本にはあります。最近ではあまり身近ではなくなりましたが、それでも春と言えばこういった山菜たちを思い浮かべる方は少なくないですよね。

山菜特有の香りやほろにがさが、にんげんの体にとって「有効」とされている歴史は長く、特に春には冬に溜め込んだものを苦い味の食材を戴くことでデトックスする効果が高いなどと言われているのは皆さんもご存知かと思います。実は熊は冬眠から目覚め、まだ寒いために、まともに野菜が出てこない季節にはじめに口にするのが山菜だとか。
熊はそのまま食べるかもしれませんが、私達人間は調理をするという方法を知っていますので良薬口に苦しといえど、出来れば美味しくいただきたいものです。
他の食材にはない独特のほろ苦さという魅力を、いかにポジティブに変換するかがカギですね。
苦みを生かす調理法として天ぷらはあまりに有名な一例ではないでしょうか。小麦粉と氷水を一対一で溶き、まとわせて揚げていくと、油はまろやかさを生み、小麦粉は液体と共に加熱されるとほんのりとした甘みを持つので山菜の苦味と口の中で混ざり合うととてもうまい。(あえて『うまい!』と言わせてください)
または、苦みを抑制すると言われている甘味と掛け合わせる調理法もありますね。酢味噌和えや甘酢和えも良いですね。
小豆の煮方をこのコラムで書かせて頂いた時と重なりますが、本来、その素材が持っている味わいをどう、引き延ばしたり、反対の味でバランスを取ったりするかが、一番その素材ポテンシャルを発揮させる技だと思っています。
それはその「主役となる素材」に感謝することに繋がり、例えるなら、メイクと同じ様。眉毛が最初からしっかりしている人はそれを生かして口紅をナチュラルにしたり、目が切れ長な人はその切れ長を生かしてあまりアイシャドーをせずにその代わりにアイラインで切れ長を強調して目尻にしっかり目のマスカラを塗るなど。つまりは個性を生かして愛すこと。
さて、話が逸れてしまったので、戻します。
そんなほんのりビターな性格だけど、人の毒を出してくれると言われる「山菜」の中でも本日は「ふきのとう」を使った定番料理「蕗味噌(ふきみそ)」をご紹介したいと思います。
たくさん作った場合はお裾分けにも喜ばれるので瓶を買ってから挑みましょう。自宅消費の場合には薄く伸ばして冷凍しましょう。味噌は冷凍庫に入れてもカチカチには固まらないので、都度食べる分だけ手で折って解凍しましょう。味のアクセントになりますよ。
それでは、レシピです。
一旦茹でたり、水に晒す作り方もあります。
私の場合はどうしているかと言うと、まず見た目で「新鮮」なものを選び、下茹でも晒しもせずにフライパンで調理する作り方が一番好き。
ほろ苦さが魅力だと思うので、それが一番活かされると思うのです。
初めて作る方は、水でアク抜きをする方法で一度だけ試しに作ってもらい、二回目に私と同じ作り方をお勧めします。なんでも、慣れていないとわからないことが多いですからね。少しでも失敗したと思うと、作るのが嫌になっちゃいますものね。

ふきのとう味噌
【材料:作りやすい分量】
・ふきのとう 80~90g(1pack程度)
・味噌 大3と1/2
・本みりん 大2
・きび糖または甜菜糖(精製されていない砂糖が良い) 小1と1/2
【作り方】
❶調味料を全てガスコンロの近くに用意しておく。
❷フライパンに多めの油を敷き、温め、ふきのとうを刻んだそばから直ぐに炒めて調味料を絡め、しっとりしたら完成!

【コツとポイント】
❶購入したその日に作ること!
❷中が黒ずんでいるものがあれば、黒ずんだ部分を取り除いて作ること。
❸刻んだあとそのまま置くと新鮮なものでもアクで茶色くなってしまいますので時間をおかないこと。
油と甘味という、先にご紹介したほろ苦さを魅力的に生かす調理方法がどちらも詰まっていますね。

マクロビオティックの観点からお伝えすると、食べ方で最も有効なのは中庸(真ん中のバランスを取れた状況)を保つことなのですが、山菜たちの上に伸びるエネルギーは、たくさん摂ると体を冷やしてしまうことがあるので、油で炒める、味噌と合わせて少量をいただく、という調理法は山菜をいただくのにぴったりの調理法と言えます。
旧暦で3月は「弥生」と言いますね。それぞれの漢字に、「弥(いよいよ)」「生(芽吹く)」という意味があるのをご存じでしょうか。冬の長い間に縮こまっていた草木が一気に成長する月ということを表しているのだそうです。
この時期に芽吹いた山菜をいただくことで次にやってくる季節に向けての養生を始めませんか。
山菜の持つ上に伸びるエネルギーとデトックス効果をお裾分けしてもらうと、私達も寒さに縮こまっていた体をぐっと背伸びをして新しい一歩を踏み出せそうです。