いつものお鍋を少し冒険!元気いただく薬膳鍋
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
季節は小雪を迎え、冬の気配がいっそう濃くなってきました。今日は、この季節にぴったりの 薬膳鍋 をご紹介します。
普段は身近な食材でつくるレシピが多いのですが、今回は初めて手にする方も多いであろう、 「オタネ人参」 をご準備いただく流れになります。とはいえ通販で意外と手に入りやすく、一度使うとクセになる方の多い食材です。
「高麗人参」という呼び名の方が馴染み深いかもしれませんが、品種名としては オタネ人参が正確な名称。産地によって“高麗・吉林”などのブランド名が生まれました。乾燥品でも生でも扱いやすく、生のものを入手したら天日干しで乾燥品にしたり、冷凍にすることで比較的長く保存がききます。

オタネ人参は参鶏湯にだけ使うイメージがありますが、冬の鍋に幅広く応用でき、にんにく・生姜と合わせることで味のバランスが整い、汎用性の高い鍋スープとなります。
火鍋のレシピを添えますが、にんにく、生姜、昆布、オタネ人参、酒、味醂のみで、水炊きのようにポン酢で召し上がっていただくのもオススメです。常夜鍋、豚・白菜と春雨の鍋、ニラと牡蠣の鍋…。どれにも自然に馴染み、最後の雑炊までしみじみ美味しい、心も身体もほっとする冬の一椀となすはずです。ぜひお試しください。
薬膳火鍋

ピリ辛がお好きな方におすすめの、唐辛子と棗がぷかぷかと浮かぶ薬膳火鍋です。辛さが苦手な場合は、唐辛子と花椒を抜き、卓上でラー油を足せば、大人も子どもも楽しめます。
【材料:4人前】
◎香味素材
• にんにく … 1片(8~10g)薄切り
• 生姜 … 1片(8~10g)みじん切り
• 乾燥なつめ … 4粒
• 乾燥クコの実 … 8粒
• 乾燥赤唐辛子 … 6本
• オタネ人参(生)… 5~10g 1本(※乾燥の場合 … 3~4g)
• 八角 … 1~2片(小さめなら2片)
• 花椒(ホール)… ひとつまみ
◎スープ
• だし用昆布(4×6cm)… 1枚(約10g)
• 水 600~650cc
• みりん … 大さじ1
• 酒 … 大さじ2
• 塩麹 … 大さじ1(15g弱)
• 塩 … ひとつまみ(味を見て調整)
◎肉・具材
• 鶏手羽元 … 6~8本
• 鶏手羽先 … 4本
• 鶏もも肉 … 1枚(約200g)
※手羽を増やす場合はもも肉は少なめでOK
• 長ねぎ … 1本(3cm幅に切って焼く)
• せり … 1/2束(4cm幅)
• 白きくらげ(戻したもの)… ひとつかみ
【つくり方】
① 手羽元・手羽先は骨に沿って切り込みを入れる。
時間があれば、フライパンで表面を香ばしく焼いておくと、鍋全体の旨みが強まる。
② 鍋に
• 水(600~650cc)
• 昆布
• オタネ人参
• 切り込みを入れて焼いた鶏肉
• にんにく
• 生姜
• なつめ
を入れ、中火で20~30分煮る。
③ 酒・みりん・塩麹を加え、味をみる。
④花椒・八角・乾燥赤唐辛子・クコの実・白きくらげを入れる。
⑤ 野菜を加えて仕上る:
長ねぎ・せりをさっと煮て、火が通ったものからいただく。
薬膳では、せりは “巡りを促し、余分なものを手放す” とされており、季節の変わり目に起こりがちな滞りをやわらかく整えてくれる食材とされています。冬に不足しがちな ビタミンCやβカロテン も含み、香りが食欲をそっと後押しします。
鶏肉は “気(エネルギー)を補い、体を温める” と考えられ、寒さでこわばりやすい冬のからだに嬉しい滋養となります。
白きくらげは “粘膜を潤し、乾いた空気によるカサつきを和らげる” と言われ、冬に嬉しい 食物繊維 を多く含むことから、やさしいとろみが鍋全体の口当たりを整えます。
長ねぎを焼きつけて加えることで、コクを加え、自然な甘みと香りが立ち、鍋の味わいがぐっとまとまります。
小さなお子さまがせりのほろ苦さを苦手にされる場合は、三つ葉や水菜に代えると、より柔らかな印象に仕上がります。
冬のからだに寄り添う、穏やかながらパワフルな薬膳鍋。ご家族のあたたかな時間に、週末のご褒美に、取り入れていただけたら嬉しいです。