冬のにおい

冬のにおい

私が生まれた、この日本という土地は、四季がはっきりとしています。子どもの頃は、季節の移り変わりみたいなものを意識しながら過ごす事はあまり無かったように思いますが、大人になって、アパレルの仕事をはじめてから春夏コレクション、秋冬コレクション、と、仕事を介して自然と意識するようになりました。

とりわけ、食に興味を持ち始めてからは、日本の四季の素晴らしさを毎年毎年、心から感じ、平和であることの素晴らしさに感謝の気持ちが生まれます。

四季のある日本では、「今は季節の変わり目だから」
その言葉は、しょっちゅう登場するセリフです。

ただ、逆に常に移り変わっているからこそ、気がつきにくい。

ふと足を止めて空を見上げ、雲の形に視線を向けたり、頬にあたる風を意識して感じてみたり、自分自身の手のひらを広げて眺めたり、そういうことをしてはじめて、

「あ、冬がはじまったんだ。」
と、心に刻むことができる気がします。

朝、窓を開けた時の、ひんやりした空気のにおい。同じ道を歩いていても、昨日までとはどこか違う、鼻の奥に届く冷たさ。冬のにおいは、そんな小さな変化の中にあるのかも知れません。毎年同じ季節が巡ってくるようで、今年の私が感じる冬は、きっと去年とは少し違うのでしょう。

季節が変わったと気づいたら、上着を一枚重ねるように、食卓にも少しずつ冬の支度をしていきたい。

冷たい飲み物を温かいものに替えたり、お鍋を火にかけたり。季節に合わせた楽しみ方を探すこと自体が、日々のセルフケアなのだと思います。

さて、体を温める食材とひとくちに言っても、「発汗を促して体の表面の寒さを散らすもの」、「胃腸など内側を温めて保つもの」と、働きに違いがあるとされています。

代表的な食材「生姜」は、中医学では、生のものを「しょうきょう(生姜)」、乾燥させたものを「かんきょう(乾姜)」と呼び、使い分けます。生姜は発汗を促して冬の邪気である「寒邪(かんじゃ)」を散らし、乾姜は体の内側の冷えを取り除き、温かさを保つものとして扱います。

ただ、温まろうとして、たくさん汗をかけば良いというわけでもありません。汗をかいたら拭いて、湿った衣服は着替えるなど外側のケアも忘れずに。

その他、中医学で、体を温める食材として知られるのが羊肉。ラムやマトンです。麻婆豆腐に使われる花椒(ホアジャオ)や、チャイで有名なクローブ、ハーブの仲間のフェンネルシードも、内側を温める働きがあるとされています。

冬に温かいチャイを頂くことや、くつくつと煮込まれたほかほか麻婆豆腐を頂くことは、理にかなっているかも知れません。

↓↓↓チャイの作り方については2026年7月配信号に掲載しております
https://epotive.epauler.co.jp/tanijiri046/

チャイの素だけ作り、夏は冷やして、冬は温かくして召し上がっていただくと良いかなと思います。黒糖で作ると、コクのある甘みとスパイスの香りが重なって、冬にうれしい一杯になります。

最近スーパーでもラム肉が豚や牛と並んで売られているのを見かけるようになってきましたので、普段は手に取らないラム肉のパックをかごに入れ、フードプロセッサーや包丁で粗く刻んで麻婆豆腐にするのも良いですよ。

台所に立ちのぼるスパイスの香りも、私たちの暮らしの中の「冬のにおい」になることでしょう。

次号では、HITOTEMA麻婆豆腐の具体的なレシピをお届けします!

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