
食卓からはじめる、夏じたく。『スパイスとお茶』の取り入れ方
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ #019

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
本格的な夏に向けて、6月からできること
皆さん、こんにちは。
梅雨入りを控えた6月。蒸し暑い日もあれば、夏のような陽射しを感じる日もありますね。気温も湿度も高まりはじめるこの時期、心地よく夏を迎えるための準備を少しずつ始めましょう。
「食養生は、先回りが基本」。
これは以前から繰り返しお伝えしている薬膳での基本ですが、今回はその視点から、夏に向けた『スパイスとお茶』の取り入れ方のご提案です。
夏の体と、汗の話
夏といえば「暑さ」。
気温の高い国――インドやモロッコ、東南アジアなどでスパイスが日常的に使われているのは、暑さを快適に乗り越えるための知恵ともいえます。
現代の私たちは、エアコンのある生活に慣れたことで「汗をかく機能」が鈍ってしまいがち。毛穴の開閉もうまくできず、うまく熱を放出できないため、体の中に熱がこもりやすくなっています。
だからこそ、汗をかきやすい体をつくる工夫が大切です。たとえばサウナや半身浴もそのひとつですが、今回は日々の食事からできる「スパイスとお茶の力」を活用したアプローチをお届けします。
スパイスのある暮らしを、気軽に
スパイス=カレー、と思われがちですが、もっと身近に、もっと手軽に楽しめます。今回は、皆さんのキッチンにも常備されているかなと思うスパイスとして、クミン・山椒・シナモンの3つの活用の工夫をご紹介します。

クミンを使って『クミン香るアヒージョ』
オリーブオイル、にんにく、そしてクミンシード。この3つをベースに、お好みの具材を火にかけるだけで、驚くほど風味豊かなアヒージョに。
組み合わせ例:
• タコ × アスパラ
• あさり × ミニトマト
• 海老 × ブロッコリー
• 砂肝 × かぶ
• 白身魚 × オリーブの実×マッシュルーム
〈おいしく作るポイント〉
材料をあらかじめボウルで和えてから、耐熱皿に入れ、オリーブオイルをたっぷり注いで火にかけると、味がしっかり馴染みます。仕上げにパプリカパウダーを少量ふると、色も香りもぐっと華やかに。
\アレンジ/
翌日は、余ったオイルを活用してドレッシングに。
クミン香るにんにく醤油ドレッシング
『玉ねぎと蜂蜜のまろやかドレッシング』
余ったオイル 大さじ3に、以下を加えてミキサーで撹拌:
• 玉ねぎ(1/2個)
• 蜂蜜 大さじ1
• 酢またはレモン汁 大さじ1.5
• 醤油 大さじ2
温野菜にも、生野菜にもぴったりです。
※ミキサーがない場合は玉ねぎをすりおろしてもOK。

山椒を使って『豆腐のためのスパイスミックス』
• 白すりごま 大さじ2
• 塩 大さじ1
• 山椒 大さじ1
• ガーリックパウダー 大さじ1
• ジンジャーパウダー 大さじ1/2
これらを混ぜたミックスに、ごま油やエゴマ油を加え、弱火で加熱。ふつふつと香り立ったら、温めた豆腐にかけて完成!

\アレンジ/
• チキンの山椒焼き
• 白身魚の香味焼き
• 厚揚げ × チーズ × 山椒
• しらす山椒のせごはん
ご飯にもお酒にも合う、万能なスパイスミックスです。

シナモンを活用して『シナモンティー』
茶葉5gとシナモンパウダー小さじ1に熱湯500ccを注ぎ、2分蒸らして完成。体を芯から温め、リラックスにも効果的です。
フレンチトーストの隠し味にも
卵液にシナモンとあればジンジャーパウダー、そしてラム酒をほんの少し。焼くとアルコールは飛ぶのでご安心を。でもぐっと風味が増し、まるでお店のような味わいに。
雨の週末には、心にスパイスを。
最後に、食と飲み物のセルフケアに加えて、心を整える「感性のスパイス」もひとつご紹介します。
映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』
スパイスが画面越しに香ってくるような、五感をくすぐる一本です。
多様性の尊さに触れつつ、旅気分を味わえる心のご褒美。
雨音をBGMに、おうち時間のメンタルケアとしてもおすすめです。
今月も、自分をいたわる時間を少しずつ。
食卓に香りを、日々に風通しを。
epotive salonとともに、軽やかな夏を迎える準備をはじめていきましょう