三寒四温の秋に寄り添う『黄色い食材』のやさしい力
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
春夏秋冬、薬膳の考え方に、色での判断基準があります。
春は緑色、夏は赤、秋は白、冬は黒い食材を積極的に摂りましょうというようなものです。白と黒を意識したい季節…なのですが、日本は今、気温が揺れ動きます。
長袖一枚で過ごせる日があったかと思えば、次の日には風を通さないコートが必要になる。そんな「三寒四温」ならぬ「秋の気まぐれ気候」。この不安定さに対応するために、私は『黄色』を追加したいと思っています。
黄色の食材
かぼちゃ、人参、さつまいも、柿、銀杏など。どれも「胃腸を支え、気力を補う」代表選手です。寒暖差でなんとなく疲れる、やる気が起きない日の助けになってくれる食材たち。
胃腸を整え、気力を補う『黄色』の力を借りたいところ。
かぼちゃ、人参、さつまいも、柿、銀杏…。どれも「元気を作る」食材たちです。根菜の中でも、温性・平性のもの、または調理によって平性に近づけられるものを選べると◎
忙しい現代の私たちにとって“続けられる料理”であることが大事ですよね。そこで簡単で、翌日も美味しく、体をしっかり支えてくれるレシピをご紹介します。
人参×くるみの味噌汁
まずは常備していることが多い人参。
人参は微温性で、甘みの野菜。乾燥する季節や、咳などによいとされています。大根と合わせて味噌汁にしたり、洋食の際にグラッセにするなど、簡単に取り入れやすい食材です。味噌汁の際に千切りや銀杏切りにすることが多いと思うのですが、1〜2mmの輪切りスライスにして味噌汁にし、くるみを合わせてみてください。人参とくるみの味噌汁はシンプルながら、切り方と組み合わせでとても新鮮で美味しいです。くるみは温性でお通じにもいいとされていますから、体のお掃除にも最適で、寒い季節にお手洗いに行く回数がふえて起こる腎の栄養不足にも一躍買ってくれます。
かぼちゃの簡単茶巾

続いて、おもてなしにも活躍させることの出来る一口お菓子、「かぼちゃの茶巾」こちらは、蒸したかぼちゃの皮を剥き、潰してガーゼやラップで一口サイズに成形するだけ。
もしも手間をかけられるのであれば、砂糖40g、水20gを火にかけてカラメル色になったらバター10gを落として溶かしたバタースカッチキャラメルをかけると洋の味わいになって華やかな味わいになります。もちろん、市販の黒蜜をかけたり、粉状になっている黒糖を上から散らすだけでも、十分美味しいですのでお試しください。
炊飯器をお持ちの方は、かぼちゃのタネを除いてオーブン用シートで包み、水100ccを入れた炊飯器に入れて「白米炊飯」を押すと、時間経過後にほかほかのあま〜い蒸しかぼちゃが出来ているので、蒸し器で蒸す代わりの調理法の候補にしてください。(※炊飯器で加熱する場合は、お使いの機種ごとの説明に従い無理のない範囲で)かぼちゃは温性に属し、脾、胃を整えるとされています。かぼちゃ自体の美味しい色と味を再確認してもらえたら嬉しいです。
焼き柿のシナモン風味

最後に、柿!
柿はそのままだと涼性なのですが、干し柿にすることや火を加えることで平性に近づきます。皮をむいて10等分くらいの2〜3cm厚程度に銀杏切りにした柿を、バターを溶かしたフライパンでじっくり焼いて、仕上げにシナモンを。焼き目がついた柿はさらに甘さが際立って、食感柔らかでとても美味しいです。シナモンは肉桂とも呼ばれ、温性を超え「熱性」に属す食べ物。中医薬膳の見解では、PMSにも効果を期待できるとされています。簡単過ぎて本当?と言われてしまいそうですが、お試しください。
柿でもう一品!
ブルーチーズと柿の春巻き

最後はおつまみの一品。春巻きの皮を用意して2等分にした長方形でブルーチーズと柿を三角に包み、中火で揚げてみてください。油をしっかりと切って皿に盛り、塩を軽く振ったら、甘じょっぱさがあとを引くクセになる味わいです。柿もチーズも生でいただける食材なので、皮に火が通ったら完成というのもわかりやすくていいですね。
美味しくて冬の準備にもなる野菜たち。
その他、長芋や里芋、蕪や蓮根など、季節の根菜も美味しくなるので取り入れていきましょう。
季節と共に体も移ろうのが人間。
だからこそ、自分を観察し、季節とも仲良くすることが
『健やかさ』=『内側からのケア』につながります。
“派手じゃなくていい、確実に豊かに”。
次回も、どうぞお楽しみに。