完璧主義をほどく 〜『十分である』を選ぶ〜

完璧主義をほどく 〜『十分である』を選ぶ〜

あなたらしく輝くためのkimi ヨガメソッド


kimi 先生
200万DLを突破した大ヒットアプリ「寝たまんまヨガ」発案者。養成コース開発、ディレクション、指導者として活躍。著書に「いちばんよくわかるYOGAポーズ全集」他多数。

「もっと頑張らなきゃ」「まだ足りない」
そんな思いに追われてしまうことはありませんか?

仕事も家事も人間関係も、どこかで“100点”を目指してしまう。けれど、その完璧主義はしばしば心と体をすり減らし、私たちを本来の豊かさから遠ざけてしまいます

ヨガ哲学には「純質(サットヴァ)」という考え方があります。これは心の澄んだ状態、調和や満ち足りた感覚を表します。完璧を求めて常に緊張していると、心はサットヴァから離れ、激質(ラジャス)や鈍質(タマス)に傾いてしまいます。大切なのは、外の評価や結果にとらわれず「今この瞬間の自分を十分とする」心の選択です。

一方、アーユルヴェーダでは、人の体質を「ドーシャ」という3つのエネルギーで捉えます。完璧主義に陥りやすいのは、火のエネルギーである「ピッタ」が過剰なとき。細かいところまで気になり、つい自分や他人を批判してしまうのです。そんなときに必要なのは、柔らかさとクールダウン。たとえば、夕暮れにゆっくり散歩をして空を仰ぐことや、温かいハーブティーを飲んで深呼吸することが、ピッタを和らげ「十分」という感覚を取り戻してくれます。

「十分である」を選ぶとは、手を抜くことでも妥協することでもありません。ヨガの教えにある「執着しないこと(アパリグラハ)」の実践そのものです。欲望や理想にしがみつくのではなく、いま目の前にあるものをそのまま受け入れる。すると、肩の力が抜け、ありのままの自分を大切にできるようになります。

<実践のヒント>
・1日の終わりに「今日できたこと」を3つ書き出す
・完璧でなくても「ここで一区切り」と深呼吸する
・できなかったことよりも、できたことに視線を向ける

これらを毎晩実践するだけでも、眠りの質が変わるくらい、満たされます。瞑想の時間にも応用できます。姿勢や呼吸を「正しく」しようと力む代わりに、「いまの呼吸で十分」と自分に言い聞かせるのです。そうすると、自然と呼吸は深まり、心も落ち着いていきます。

「完璧」を目指す代わりに「十分」を選ぶことは、自分に対する暴力をやめ、優しさを取り戻すことでもあります。ヨガ哲学の非暴力(アヒムサ)は、他者だけでなく自分にも向けるべきもの。完璧をほどき、「十分である」と受け止める瞬間に、私たちの心は最も穏やかに輝き出すのです。

どうぞ今日、深呼吸をひとつして、自分にこう伝えてあげてください。

「私は、十分である。」

その小さな気づきが、心を自由にし、やさしく生きるための第一歩になるのです。

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