春のほろ苦さに、ほんのりの甘さを添えて

春のほろ苦さに、ほんのりの甘さを添えて

料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

谷尻直子 Tanijiri Naoko
東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。

家庭の健やかの味方、『甘酒塩麹』と春の食卓

春野菜、春野菜と、よく耳にする季節です。

ウドやうるい、蕗のとう、たらの芽。美味しいことは知っていても、どこか手を出しにくい。そんなふうに感じている方も、少なくないのではないでしょうか。

「どう扱えばいいのかわからない」
そんな声もたびたび耳にします。

私自身、こうした春のほろ苦い野菜は、天ぷらという「油」と「衣」によって苦味をやわらげる、理にかなった食べ方があると感じています。けれど同時に、もっと日常の食卓に、無理なく取り入れられないものか。そんなことを、ずっと考えていました。

このコラムでは、旬の食材をあらためて見つめ直し、いつもなら通り過ぎてしまうそれらを、ふと手に取ってついスーパーマーケットのかごに入れたくなる。そんな小さなきっかけになれたら、と思っています。

腸活、発酵、リビングフード、インナービューティ。それらのキーワードを軸に、4月の味わいとしてお届けするなら、春の食材に添えたい調味は、「ほんのり甘い」という感覚です。古来、苦味と酸味を摂る季節なのですが、現代の春は「変化」と「成長」の季節。生活の変化が訪れ、日々の動きが活発になり、気持ちが揺れやすかったり、イライラや不安定さを感じやすくはないでしょうか?

私自身は、それを感じることがあります。
そんな時に意識して用意するのが「甘味」。

春に「緑をいただく」という、あの苦味とは対照的な存在ですが、だからこそ、配色でいうところの対色のように、互いを引き立て合う組み合わせになるのだと思います。とはいえ、甘味をどこか後ろめたさとともに摂るのはなんだかまた別のストレスを生みそうです。

そこでおすすめしたいのが甘酒です。

今では多くのスーパーで手に入る塩麹と甘酒を合わせて、
1:1で混ぜるだけ。
甘くて、しょっぱくて、どこか懐かしい、
「あまじょっぱい」家庭の味が生まれます。

春野菜は、大人にとっては今しか出会えないご馳走。ですが、子どもと囲む食卓では、あの独特のほろ苦さが、そのままでは受け入れられにくいという事実に出会います。

そんなときは、
甘じょっぱく仕上げること、
あるいはチーズを合わせること。

この二つが、「子どもと春野菜の距離」を縮めるお手伝いをしてくれます。

甘酒塩麹のベースは、少しの工夫でさまざまに広がります。

柚子やレモンの果汁、オリーブオイルを加えれば、
軽やかな「甘酒塩麹ドレッシング」に。

すりおろした生姜を加えれば、
香りのよい「甘酒塩麹ジンジャーソース」に。

酒粕を合わせれば、
やさしい粕漬けの床:「甘酒塩麹漬け床」にもなります。

つぶ感が気になる場合は、フードプロセッサーなどで撹拌してなめらかに仕立てても。

たとえば、豚肉と新玉ねぎを炒め、火を止めてから「甘酒塩麹ジンジャーソース」を絡めれば、発酵仕立ての生姜焼きに。刻んだ春キャベツには、「甘酒塩麹ドレッシング」を添えて。

ズッキーニや人参、きゅうりは、「甘酒塩麹漬け床」で軽く和え、3時間ほど置けば、やさしい即席漬けに仕上がります。

豚肉を鶏肉に変えてもいいし、
野菜の代わりに魚を漬けてもいい。

キャベツを白菜に変え、塩昆布を少し添えるのも良いですし、叩いたきゅうりと水切りした崩し豆腐をドレッシングで和え、ゆかりをひと振りするだけでも、季節の一皿になります。

一度、この1:1の甘酒塩麹を用意しておけば、食材を替えるだけで、日々の食卓にいくつもの展開が生まれます。現代版のおふくろ料理というような、しっかり甘みという輪郭のある味わい。

塩麹も甘酒も、メーカーによって風味や質感に違いもありますが、それもまた、その日の食卓の個性として、ぜひ一度、気負わずに試してみてください。

気軽に手軽に失敗のない発酵ご飯で、少しの甘さを添えて、日々、空のお天気と自分の心のお天気の変化を受け止めて過ごしていけたらと思います。

  • #インナーケア
  • #自然の恵み

サービスガイド