『飲むセルフケア』だし汁を自由に解放し、日々のスープに。
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
「日本のだし汁」をベースとした、「スープの展開」
今日は、疲労感のある時や消化吸収を整えたい時にも優しく寄り添ってくれる、「日本のだし汁」をベースとした、「スープの展開」をお伝えしたいと思います。
だし汁というと、味噌汁やすまし汁など、和食にしか登場しないイメージをお持ちの方も多いかもしれません。けれど実は、カツオと昆布でひく定番のだし汁は、私たちが思う以上に懐が深く、和食以外の味わいも、自然に受け止めてくれるのです。
1)ナンプラー

例えば、ナンプラー。
大根とにんじんの味噌汁の代わりに、だし汁へ、ナンプラー、酒、味醂、そして塩を加えて調味してみてください。
だし汁で作るオリエンタルなスープ
【材料/1人前】
・一番だし 250cc(だしパックでも問題ありません!)
・ナンプラー 小さじ2
・酒 小さじ2
・みりん 小さじ2弱
・きび砂糖 小さじ1弱
しらすトーストや、きゅうりのサンドイッチにもよく合う、オリエンタルな味わいのスープが完成します。実は茹でた素麺を入れると「フォー」のようになってとってもおいしいです。
2)クミン

さて、お次に合わせるのは、クミン。
玉ねぎの櫛形切りと、生姜のみじん切りを植物油で炒め、そこへクミンシード、またはクミンパウダーを加えて香りを立たせます。そこへだし汁を加え、お好みの初夏野菜を入れて柔らかくなるまで煮る。あれば白ワイン、なければ酒で風味づけし、味付けは塩のみで完成です。
クミンとだし汁を一緒に使うなんて、少し邪道!
と、叱られてしまうかもしれません。
でも、カツオは魚介類、昆布は海藻。
それらは日本だけでなく、世界の海域に存在する生き物たちです。ユニバーサルな食材に、太陽の力と発酵の力によって旨みが生まれている。
そんなふうに因数分解して考えると、だし汁の懐の深さや可能性の広がりを、少し感じていただけるのではないでしょうか。
3)トマト

ご存知。トマトとの相性も抜群です。
2cm角くらいにカットしたトマトをだし汁でさっと煮て、塩で調味。甘みの薄いトマトなら、味醂をひと垂らししても。
トマトに含まれるグルタミン酸の旨みは、昆布の旨み成分とも共通するもの。そこへ、トマト特有の酸味や香りが重なることで、味わいに自然な奥行きが生まれます。
さらに、トマトに含まれるリコピンは、油と一緒に摂ることで吸収率が高まると言われています。仕上げにオリーブオイルをひと垂らしすると、まろやかさも加わり、栄養面でも美味しさの面でも抜群です。ラタトゥイユに入れる野菜を使って、トマトベースのミネストローネ風にすることも。
『飲むセルフケア』としてのスープ
私は普段、2~3日に一度、2リットル程度の一番だしをひくのが「暮らしの定番」になっています。けれど、食事としていただくものは和食だけではありません。
洋食、中華、エスニック、イタリアン。
日々、さまざまな料理が登場します。
そんな現代の日本人の食卓に自然に寄り添ってくれるのが、「だし汁」なのです。
この展開法が自然になると、だしをひく時間を『手間』とは感じなくなるかもしれません。
調味料が最小限でも、美味しさを支えてくれるだし汁。素材そのものの旨みを引き出してくれる、天然のアミノ酸の力を、ぜひご自身のアイデアで自由に広げてみてほしいな、と強く思うのでした。
スープというのは、消化に負担がかかりにくく、料理でありながら、『飲むセルフケア』のような存在でもあります。
今までの常識にとらわれすぎず、
楽しみながら、
『美味しい・ヘルシー・うつくしい』 を、
日々の食卓で実践していきましょう。