夏を心地よくする「香り」の下準備 ~ハーブバター編~
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
やってきましたね、本格的な夏。
かく汗とともに、やる気すら流れて出てしまいそうな季節です。とはいえ、そうも言っていられません。
こんな高温多湿の日本でも、日本で過ごす私たちは昔から食材や香りの力を借りながら、この季節を心地よく工夫を重ねてきました。先日ご紹介したスパイスと同じように、夏の台所で活躍するのはハーブです。
みずみずしい香りは、暑さでぼんやりしがちな気分をリフレッシュさせ、食卓に爽やかさを運んでくれます。
薬膳では、香りのある食材は「気」の巡りを助けると考えられています。夏は湿気や暑さで食欲が落ちたり、なんとなく気持ちまで重たく感じたりすることがありますが、そんな時こそ香りは心強い味方です。
我が家でハーブを使って作り置きするのが、「ハーブガーリックバタートースト」。なんと、丸のままのバゲットを使えば、冷凍室のサイズが許せばですが、冷凍可能なのです。これを常備しておけば、食べたい分だけ切って焼くだけで、焼きたてのガーリックトーストが楽しめます。

私が昔、ロンドンに住んでいた頃に、とあるベーカリーで一本まるごとの形状のガーリックトーストを見つけ、そこから想像で手作りし始めたのがきっかけです。ホームパーティをよく行っていた20代、活躍した品のひとつです。
パセリは、料理の添え物というイメージが払拭できませんが、実はとても栄養価の高いハーブです。
β-カロテン、ビタミンC、ビタミンK、葉酸、鉄分、カリウムなどを豊富に含み、彩りだけではもったいないほどの実力派。ただ、苦いし、なかなかそのまま食べたい!という気持ちにはならないですよね…。よほどの変わり者でない限り…。
組み合わせるにんにくは香りだけでなく、体を温め、巡りを助ける食材として知られています。冷たい飲み物をいただくことの多いこの季節にはいい組み合わせですね。単体では「パセリ食べたい!」という気持ちにはなかなかなりにくいパセリですが、にんにくと出会うと一気にしずる感が。
今回のレシピは、市販のガーリックバターよりも、にんにくをしっかり効かせ、パセリをたっぷり使うのがポイント。じゅわーっとしておいしいですよー。
ハーブガーリックバタートースト
【材料/バゲット1本・約180g分】
・有塩バター 60~65g
・すりおろしにんにく 1片(5~10g)
・パセリ(葉) 10~15g
・塩 小さじ1/4
※チャービルやイタリアンパセリ、ディルを混ぜてもおいしくいただけます。
【作り方】
① バゲットに2cm程度の感覚で、底1cmはつながった状態を保って、縦に切り込みを入れます。
② 室温に戻したバターに、すりおろしたにんにく、刻んだパセリ、塩を加えてよく混ぜます。
③ バゲットの切り込みへ、バターナイフで差し込むように塗り込んだら下準備は完了。
この状態でラップに包み、冷凍保存ができます!
食べる時は必要な分だけ切り分け、200℃のオーブンで約5分焼くだけ。
切り込みをしっかり入れてあれば、手でちぎれます。
焼き色が付きすぎる場合は、アルミホイルを軽くかぶせるときれいに仕上がります。
一本そのまま焼く場合は、切った時よりも加熱時間が長くなるので、焦げないように、オーブンの中段や下段で焼くのがおすすめです。
丸々一本一気に仕上がります。
オーブンから立ち上る香りで、すでにご褒美気分を味わえてしまいます。

【合わせたい料理】
クリームシチューやチキンのトマト煮、カレーなど、旨みのある料理との相性はもちろん、蒸し鶏のサラダやピーラーで薄く削ったきゅうりやズッキーニにもよく合います。
バゲットのサイズによってはハーブバターが余るので、朝の目玉焼きにもぜひ!ほんのひとかけらのせるだけで、溶けたバターとハーブガーリックの香りが立ち、少し特別な朝食に。
焼いている間に広がる香りは、ひと足先に「いただくワクワク」を運んできてくれます。余りがちなハーブを最後までおいしく使い切れるのも、このレシピの魅力。夏は味だけではなく、「香り」も立派なごちそうです。ぜひ、冷凍庫にひとつ常備して、忙しい日にも焼きたての香りを楽しんでみてください。
スパイスも、ハーブも、料理をおいしくするためだけではなく、暑い季節にフレッシュなエネルギーを生み出してくれる様な存在。夏がコワイ!そんな声も聞こえてくるようになりました。そんな夏を少しでも心地よく過ごすためのキッチンでのひとときは、ポジティブに行ってみると、実験のように楽しいものです。