寒露のころ、潤して冷やさない食卓
料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ

東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。
皆さんは、季節によってフットワークが変わる方ですか? それとも一年を通してアクティブ?
私は気温が下がってくると、出かける前に「ちょっと面倒だな」と思う日が増えます。外に出てしまえば楽しいのに、家を出るまでが長い。そんな自分に、秋が来たなあと感じます。
10月に入ると、朝晩の空気も少しずつひんやりしてきます。二十四節気の「寒露」は、草木に降りる露が冷たく感じられるころ。日中は過ごしやすくても、夕方になると急に肌寒いことがありますね。ストールやカーディガンを一枚持って出るように、食卓でも「潤すこと」と「冷やさないこと」を意識したい季節です。
中医学では、この時季の食材として梨や白キクラゲなどがよく挙げられます。私のコラムにも白キクラゲは何度か登場していますが、毎日のごはんに取り入れるなら、白木耳のほかに、身近な食材を見回すところから始めても良いのです。
蓮根や山芋、きのこを献立に加えたり、おやつにくるみを食べたり。今の季節においしいものを選ぼう!とお買い物に出る時から楽しみを意識して行うのがポイント。
秋冬に向けて、家に少し置いておきたくなるのが乾物です。切り干し大根や干し椎茸が棚にあると、買い物に行くのが億劫な日にも、何か作れそうな気がします。
切り干し大根は煮物にすることが多いかもしれませんが、私はさっと和えて食べるのも大好きです。
ここで、私が本でも紹介した戻し方をひとつ。切り干し大根をたっぷりの水に浸すのではなく、さっと水を通すだけでそのまま10分ほど置きます。表面についた水分を切り干し大根が吸って、食べやすいやわらかさになって、たっぷりの水を使わなくても、食べられるようになるんです。水に浸さないので、旨みや栄養も流れ出にくく、本当におすすめの下処理。
この方法で戻した切り干し大根を、まな板に乗せてざくっと十字に切ったら、さっと茹でて食べやすく切ったパクチーと一緒にあえます。あれば、ホタテの水煮缶や、鶏ささみの茹でたものも一緒に。

たれは、すりおろしにんにく、蜂蜜、ナンプラー、ごま油を混ぜるだけ。シャキシャキした歯ごたえが残って、いつもの切り干し大根とは少し違う一皿になります。パクチーが苦手なら、三つ葉でもおいしいですよ。
薬膳で秋は空気の乾燥に気をつけましょうという季節。そんな時にも、民間療法のはちみつ+大根は最適な組み合わせです。

食後には、旬の柿を焼いてみませんか。皮をむいて12等分櫛形にした柿を、フライパンでじわじわと焼くだけ。火を入れると香ばしさとやわらかさが加わり、生の柿とは別の顔を見せてくれます。焼いた柿は新鮮なしつらえですよ。
そのままでも美味しいですが、自家製クリームチーズを乗せても。ヨーグルト400gに塩麹40gを泡立て器でよく撹拌してからガーゼやサラシ、コーヒーフィルターで水切りした、手作りのクリームチーズ風。たっぷりのクリームチーズが安価にでき、ヨーグルトと塩麹のダブル発酵なので、私はよく作ります。簡単につくるには、ギリシアヨーグルトでもいいですよ。

焼いた柿にこれを添えて蜂蜜をかけ、刻んだナッツをふります。お酒に合わせるのなら、シナモンパウダーやオールスパイスをかけても大人の味わいになっておすすめ。温かい柿と、ひんやりしたクリームの組み合わせが、秋のデザートらしくておいしいですよ!

食事も甘いものも、その日の気温や体調に合わせて少しずつ。秋の食卓を楽しみながら、冬への準備を始めましょう。